2017年7月27日、消費者庁はソフトバンク株式会社に対し、同社が供給する「Apple Watch」に関する広告について、景品表示法5条3項で禁止されるいわゆる「おとり広告」であるとして、措置命令が下されました。
携帯電話業界でも最大手であるソフトバンク株式会社に措置命令が出されたインパクトは大きく、日経新聞などの全国紙やTVニュースでも取り上げられています。
また、ここ福岡県でも、福岡市の不動産会社が、実際には存在しない架空の賃貸物件をホームページにあたかも実在するかのように掲載していたため、おとり広告にあたるとして、同不動産会社に再発防止が命じられました。
今回のコラムでは、ソフトバンクの事例をベースに、景品表示法の広告規制について見ていきたいと思います。
今回の事案の概要
広告内容
ソフトバンク株式会社は、2016年11月1日~4日までの間、ホームページにおいて、以下の広告をしました。
Apple Watch(第1世代)が! スペシャルプライスで買えるのは今だけ! 本体価格11,111円 表示価格は税抜です。」
なお、同一ページ内の以下の注意書きがありました。
キャンペーンの実情
キャンペーン対象の485店舗で、キャンペーン初日にApple Watchの在庫が準備されておらず、販売はできない状態でした。
措置命令の根拠
景品表示法5条3項では、「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの」を禁止しています。
条文だけ見ると「なんのこっちゃ」という話ですが、実際に用意できていない商品やサービスを広告し、それに惹きつけられた消費者に別の商品などを販売する「おとり広告」などを想定しています。
本件についての問題点
今回、消費者庁が問題視したのは、
- 「在庫がなくなり次第終了」との表示は、在庫があることが前提の記載
- 「商品によっては在庫がない」との表示は、在庫がないことが例外であるかのような記載
となっているにもかかわらず、在庫が用意できておらず、各店舗の準備状況が適切に表示された広告ではないという点です。
広告をうったものの、在庫確保ができなかったというのが実情のような気がしますが、残念ながら広告と在庫状況がズレている以上は「おとり広告」という評価をされえます。
このように、現場との伝達ミスなどでもうっかり広告規制に違反してしまうのが景表法の怖いところです。
措置命令の内容
消費者庁は、ソフトバンク株式会社に対し、
- 今回の広告が景品表示法違反であったことを消費者に周知徹底すること
- 再発防止策の徹底
- 同様の表示を今後行わないこと
以上3点を命じました。
これら命令には罰則などが含まれていないものの、特に「1」について会社名とともに違反の事実が公表されるという社会的なダメージが大きかったといえます。
最後に
繰り返しになりますが、広告主の意図に関わらず、広告内容と実情がズレている場合には広告規制違反になりうる以上、キャンペーンや広告を行う際には景表法に違反しないか十分なチェックを行う必要があります。
景表法による規制にはこの他、「優良誤認表示:塾などで根拠なく合格実績を記載するなど」「有利誤認表示:実際には誰にでもその価格で販売するにもかかわらず、『あなただけに優待価格』と表示するなど」があります。
優良誤認表示規制と有利誤認表示規制の違反については、2016年4月より売上額の3%を課徴金として納付を命じる課徴金制度がスタートしており、今後さらに広告方法に気を配っていかなければなりません。
とはいえ、無難な広告だけでは効果が上がらないのも現実です。
アウト/セーフの境界線がどこにあるのか、弁護士に相談されつつ広告を行うことをお薦めします。