悩み

今年10月13日と15日に、同一労働同一賃金に関する重要な最高裁判決が立て続けに出されました。

10月13日は、非正規社員に対する格差が不合理ではないという判断(「メトロコマース事件」、「大阪医科薬科大学事件」)が示され、その2日後の15日には、格差が不合理であるとの判断(「日本郵便事件」)が示されました。

今回の判決に関する誤解

そのニュースを見られた方から、

非正規社員には退職金、賞与を支払わなくても問題ないという判例が出た

13日と15日で矛盾する最高裁判決が出された

などといったご感想を耳にしましたが、いずれも誤解です。

退職金、賞与においても格差が不合理であると判断される可能性は今後もありますし、各企業の実態を踏まえて別の待遇について判断されたことからすれば、13日と15日で決して矛盾する判決が出たわけではありません。

何をすればよいのか?

今回の最高裁判決は今後の実務において重要な指針となるものですが、今後も会社ごとの事情を考慮した判断がなされることに変わりはありません。

最高裁判決の結果を踏まえて、各企業で自社の実情を踏まえた対応が必要です。

同一労働同一賃金規制は、働き方改革関連法案の一つとして今年4月に施行されています。

中小企業については来年4月から施行されることとされており、施行まで半年を切りました。

そのため各企業で準備を進めていると思われますが、

そもそも同一労働同一賃金とは何か?

具体的に何をすればよいのか?

といったご相談が最も多いことからも分かる通り、同一労働同一賃金というのは非常に分かりづらい制度です。

そこで今月から、「中小企業において、同一労働同一賃金対策として具体的に何をすればよいのか」という点を何回かに分けて説明していきたいと思います。

そもそも同一労働同一賃金とは何か?

同一労働同一賃金には2つのパターンがあります。

一つは「均等待遇」、もう一つは「均衡待遇」です。

均等待遇

均等待遇とは、

正社員と同視すべき短時間・有期雇用労働者については差別的取扱いを禁止する

というものです(パート・有期法8条)。

正規社員と非正規社員とで、職務内容、人材活用の仕組みが同一の場合には、待遇に差を設けてはならないというが均等待遇です。

同一の労働には同一の賃金(待遇)をという意味で、「同一労働同一賃金」という文言からイメージしやすいものだと思われます。

均衡待遇

これに比して、均衡待遇とは、

正社員と短時間・有期雇用労働者に待遇差があっても不合理であってはならない

というものです(パート・有期法9条)。

「均等待遇」は差別(格差)自体を禁止するのに対し、「均衡待遇」は待遇差の存在を前提に、職務内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理であってはならないという規制です。

格差が不合理化どうか

一般的に、正社員と非正規社員では待遇が異なり、基本給、手当、賞与、退職金などで正社員が優遇されています。

その差を、正社員と非正規社員との仕事内容や人材活用の仕組みなどの違いによって合理的であると判断されれば問題ないですが、その仕事内容や人材活用の仕組みなどからしても、差を生じさせることが不合理であると判断されれば問題となります。

正社員と非正規社員の職務内容・人材活用の仕組みが同一ということは少ないです。

そのため均衡待遇が裁判等において問題になることが多く、同一労働同一賃金の裁判のニュースでは「不合理と判断」などといった見出しになることが多いです。

企業に求められる対応は?

同一労働同一賃金対策として企業に求められることは、大きく分けて次の2点です。

  1. 不合理な待遇格差の是正
  2. 待遇差に関する説明の準備

待遇差の理由を説明できますか?

「待遇差に関する説明の準備」についてはここまで触れていませんでしたが、非正規社員などから待遇差についての説明を求められた場合に、企業がそれを説明する義務が明確化されました(パート・有期法14条2項)。

たとえば非正規社員から、「なぜ私たち非正規社員には、住宅手当がつかないのですか?」といった問い合わせがあったときに、企業はその理由を説明しなければならないということです。

貴社ではこれを説明できるでしょうか?

説明の準備が必要な理由

「待遇差の理由を毎日質問されるわけではないので、質問されたときに個別に検討すればよいのではないか」とも思われるかもしれません。

たしかに、個々での対応で足りる場合もあります。

しかし、複数の回答者が想定される場合に統一した回答がなされないおそれがあったり、準備をせずに曖昧な回答をしたことがのちの裁判において不合理か否かの判断の材料とされることとなるので、説明の準備は重要です。

まず「不合理な待遇格差の是正」から始める

弁護士吉原

もっとも、待遇差の理由については不合理な待遇差を是正する過程で検討することにもなるで、まずは「不合理な待遇格差の是正」を進めることが重要です。

では、「不合理な待遇格差の是正」を進めるために、中小企業は具体的にどのように対応をすればよいのでしょうか?

一般的には

  1. 現状確認(雇用形態、労働条件の整理)
  2. 待遇差の理由の確認
  3. 職務内容・人材活用の仕組みの見直し若しくは待遇の見直し

という流れで検討していくことになります。

これらについては、次回以降、具体的に説明していきたいと思います。

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