皆様は「カスハラ」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?
カスハラとは「カスタマー・ハラスメント」の略で、顧客(カスタマー)から会社に対して行われる著しい迷惑行為をいいます。
悪質クレーマーの問題は、昨今、職場におけるハラスメントの一種として再定義されようとしています。
会社の安全配慮義務とカスハラ
厚生労働省に設置された「職場のパワーハラスメント防止対策についての委員会」が2018年に公表した報告書には、次のような記述があります。
使用者は労働契約に伴って安全配慮義務があり・・・一般的には、顧客や取引先など外部の者から著しい迷惑行為があった場合にも、事業者は労働者の心身の健康も含めた生命、身体等の安全に配慮する必要があることを考えることが重要である。
このことを踏まえれば、事業主が労働者の安全に配慮するために対応が求められる点においては、顧客や取引先からの著しい迷惑行為は職場のパワーハラスメントと類似性があるものとして整理することが考えられる。
ここでは顧客からの悪質クレームを、パワハラに類似したものとして整理することが示唆されています。
かつては「お客様は神様である」という標語のもと、クレームに対しては謝罪に徹することが是とされてきた面があります。
しかし、明らかに不当な要求に対して機械的な謝罪を行っていると、それにより従業員がうつ病などを患ったときに会社が責任を問われる可能性があります。
一般的なクレームとの線引き
カスハラと思わしき事態が発生したときに会社がまず判断すべきことは、それが一般的なクレームに留まるものなのか、カスハラなのか、ということです。
なぜなら、カスハラであれば、従業員を守るためにその行為をやめさせたり、クレーム対応マニュアルを作成するなどの措置をとることが、安全配慮義務の一環として会社に求められるからです。
会社がこれを放置して従業員がメンタルヘルス疾患等を患った場合、安全配慮義務違反として損害賠償請求をされるおそれがあります。
考慮すべき要素
では、カスハラと一般的なクレームをどのように区別すればよいのでしょうか。
カスハラの該当性を判断するときに考慮すべき要素は2つあります。
一つは、相手方による要求の内容の相当性です。
相手方からの要求として、慰謝料や交通費などの金銭、商品の返品や交換、謝罪など等が考えられますが、過大な金銭や土下座による謝罪を求めてくるようなときは安易に応じないようにすべきです。
もう一つは、要求の態度です。
暴行や脅迫などの犯罪行為はもちろん、大声で怒鳴る、長時間または多数回にわたって電話をかけてくる、事業場に長時間居座る、担当者を長時間拘束するなど、社会的通念に照らして相当性を欠く態度で要求を行ってくる場合には、毅然とした対応が必要です。
最後に
会社が安全配慮義務を果たすための方法として、個別のカスハラに対して適切な対処をすることのほかに、社内のクレーム対応マニュアルを作成することが挙げられます。
また、個別のカスハラに対応する際は、事実関係の調査の方法、音声の録音の可否、警察を呼ぶかどうかの判断、謝罪文を求められたときに応じるかどうかなど、重要なポイントがいくつかあります。
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