弁護士吉原

先月からテレワーク特有の問題社員対応というテーマで連載を行っております。

前回は従業員のPCのモニタリングの可否についてご紹介しました。

今回はテレワークにおけるハラスメントの問題について解説します。

テレワークにおけるハラスメントとは

ハラスメントといっても様々ですが、企業において特に注意すべきなのは、パワー・ハラスメント(パワハラ)、セクシャル・ハラスメント(セクハラ)、マタニティ・ハラスメント(マタハラ)です。

今回取り上げるテレワークでのハラスメント(いわゆるリモート・ハラスメント)は、ハラスメントの新たな類型が増えたというわけではなく、これまでのハラスメントの異なる場面における応用だと理解していただければと思います。

なお、最近ではカスタマー・ハラスメント(カスハラ)も注目されています。

カスハラについては弊所のオンラインセミナーで詳しくご説明する予定です。

なぜハラスメントが増えたか

テレワークでハラスメントが増えた」と認識されている企業も多くなっています。

そのような企業は、なぜハラスメントが増えたのか考えてみましょう。

考えられる理由は様々あると思いますが、対面によって補完されていたコミュニケーションの質が低下したという部分もあると思います。

職場の会話がなくなり、チャットやメールなど文章でのやり取りだけになってしまうと、どうしても殺伐とした会話になりがちです。

ネット掲示板などの会話が無秩序で攻撃的な内容になりがちであることからも、なんとなく想像できるかもしれません(もちろん、テレワークによって社内の人間関係がネット掲示板のようになるわけではありません。)

リモート・ハラスメントとその対応

リモート・ハラスメントといえど、結果的にそこで生じるのはパワハラ、セクハラ、マタハラといった典型的なハラスメントです。

となると、結果的にテレワークがハラスメントを生じさせやすいことに留意し、パワハラを例にとれば「パワハラに該当するかしないか」を検討し、該当する場合においては、調査を実施し、事実関係を確定し、配置転換や懲戒など対応を検討するほかありません。

パワー・ハラスメントに該当するかの判断においては、「パワハラの6類型」にあてはめながら検討していくのがわかりやすいでしょう。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求
  5. 過小な要求
  6. 個の侵害

テレワーク勤務下においては、身体的な攻撃(①)というのは考えにくいですが、以下のようなことは起こり得るでしょう

皆が参加するWEB会議の場で長時間叱責する」(「6類型」の2)
業務時間外にも勤務状況の報告を執拗に求める」(「6類型」の4)
WEB会議において背景に映る自宅や家族に関する悪口を言う、自宅を見せるよう強く求める、オンライン飲み会などの参加を強要する」(「6類型」の6)

福岡県では緊急事態宣言が解除されましたが、すでにテレワークは当たり前のものになりつつあります。

次回以降は、休業手当の支給が不要になる「不可抗力」の要件とテレワークの関係についても解説いたします。

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