弁護士吉原

広告・マーケティングは企業経営にとって非常に重要な活動です。

マーケティングの手法は複雑化しており、インターネット広告費がテレビ広告費を超えたことが昨年報道されたのも記憶に新しいところです。

また、単なるインターネット広告といっても、その広告の手法は、バナー広告や、リスティング広告、アフィリエイト広告、SNS広告など様々です。

広告規制に関する法規制もかなり複雑になっています。

広告規制に関する法律

広告規制に関する基本的な法律として景品表示法(景表法)がありますが、その他にも業種、商品などによって別途規制がかかる複雑な法規制となっています。

私がよく業務でリーガルチェックをするに際して参照するものだけでも、医薬品、化粧品、健康食品等については薬機法や健康増進法、保険関係については保険業法、通信販売などに関しては特定商取引法などがあります(特定商取引法の広告規制は意外と見落としがちです。)

ちなみに、弁護士にも広告規制(弁護士の業務広告に関する規程等)があります。

今回は、どの業種・商品でも確認が必要となる景品表示法についてご説明いたします。

景品規制と表示規制

景品規制

景品表示法で記載されているのは、「景品規制」と「表示規制」の2つです。

景品規制とは、懸賞などにより景品類を提供したり、購入者全員にプレゼントを配ったりする場合の規制です。

たとえば、「1万円の商品を購入した人全員に配る景品は、2,000円以内でなければならない」といったルールです。

表示規制

表示規制とはその名のとおり、広告について不当な表示を規制するものです。

不当表示規制には主に2種類の不当表示があるとされます(正確には3種類ですが、ここでは省略します。)。

  • 優良誤認表示
  • 有利誤認表示

です。

優良誤認表示とは、「商品等それ自体」に係る表示についての規制(実際に含まれない成分が配合されていると表示する等)で、有利誤認表示は、「価格その他の取引条件」に係る表示についての規制(根拠なく「この地域で一番安い」と表示する等)です。

ガイドライン

さらにガイドライン等で類型別に不当表示に該当するものが規制されています。

ガイドラインとして定めてあるのは、主なものとして、

  • 二重価格表示(「通常価格10,000円のところ今だけ5,000円!」といった表示)
  • 比較広告(他社の商品と自社の商品を比較した広告)
  • インターネット消費者取引(クチコミサイト、アフィリエイト広告)

などです。

ガイドラインの性質

基本的にガイドラインは、「セーフハーバールール」だと言われています。

「セーフハーバールール」とは合法とされる例を示したもの、すなわち「ガイドラインを守っていれば違法とはされない」というもので、ガイドラインに反すれば直ちに違法となるわけではありません。

ただし、景表法の解釈についての指針となるもので、広告審査に際しては当然重視すべきものです。

他方で、セーフハーバールールに則って確実に表現をすれば、広告としての訴求効果が薄れてしまうという側面もあります。

著作権

広告に写真や画像を使うことも多くあると思いますが、それらの写真や画像には著作権があります。

「著作権が発生しうる著作物に該当するか」の判断は簡単ではありません。

著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、芸術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています(著作権法2条1項1号)。

風景の写真なども当然著作物に該当し著作権が発生します。

文章なども、単なる事実(「●●で1位として表彰された」等)であれば著作物とはいえませんが、新聞、雑誌、ネットニュースなどの記事は基本的に著作物として扱うことになります。

著作権は、商標権や特許権などと異なり、登録等の手続は不要で、創作した段階で著作権が発生します

著作権フリーとされている画像については使用することに許諾等は不要ですが、そうでない画像を勝手に用いて広告として使用すると著作権侵害となる可能性があるので注意が必要です。

また、著作権フリーであるとしても、一定の利用については有償となるといった規約がある場合があるので注意が必要です。

たとえば、著作権フリーで有名な「いらすとや」などは、21点以上の素材を使用した場合、有償となる旨の利用規定があります。

肖像権・パブリシティ権

肖像権・パブリシティ権は、法律で定められた権利ではありません。

しかし、裁判例などで法的に認められる権利として確立されています。

肖像権とは、「自己の容ぼう姿態をみだりに撮影等作成され、これを公表されることを拒絶することができる権利」だとされています。

タレント、スポーツ選手等の著名人の肖像は、その著名人の社会的評価等によって、商品等の宣伝に効果があるとされていますが、その根拠となる顧客誘引力を有する肖像等における財産敵価値をパブリシティ権と表現します。

第三者の「容ぼう姿態」を無断で撮影等して公表すると、パブリシティ権や肖像権の侵害となる可能性があるということには留意しておく必要があるでしょう。

撮影者が意図せず写り込んでしまったような場合であっても、法的には肖像権侵害等となる可能性がありますので、ぼかしをいれて特定できないようにするなどの工夫が必要です。

当然、無断に撮影されたものではない画像として提供されているものを取得した場合には、それに人物が写っていても、著作権とは別に肖像権などが問題になるわけではありません。

最後に

広告規制に対して言葉狩りのようなイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、消費者にとって自主的かつ合理的に商品を選択してもらうという景表法の趣旨を理解し、ガイドラインの解釈、規制事例などを踏まえてリーガルチェックを行っていくことが重要です。

  • 小林由佳弁護士
  • この記事を書いた弁護士

    小林 由佳(こばやし ゆか)
    たくみ法律事務所 福岡オフィス所属
    長崎県長崎市出身。日本大学法学部、九州大学法科大学院を経て司法試験に合格。熊本での司法修習を経て弁護士登録。注力分野は労務問題(不当解雇、未払い残業代請求、問題社員対応等)、不動産問題、広告法務、各種契約書チェック。

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