昨年12月に法改正が行われ、職場における一般的な労働衛生基準が見直されました。
これにより、事務所における明るさ(照度)やトイレの設備に関する基準が改正されました。
今回の改正を受けて会社が取り組むべきポイントを解説します。
明るさ(照度)
照度については、これまでは次の3つの作業区分ごとに基準が定められていました。
- 精密な作業 300ルクス以上
- 普通の作業 150ルクス以上
- 粗な作業 70ルクス以上
今回の改正で、次のとおり、事務作業における作業面の照度の作業区分が2区分とされ、基準が引き上げられました。
- 一般的な事務作業:300ルクス以上
- 付随的な事務作業:150ルクス以上
改正前後の基準を表に次のようになります。
これまでデスクワークは「普通の作業」に分類されて照度は150ルクス以上あれば足りるとされてきましたが、今後は300ルクス以上が必要となりますので注意が必要です。
300ルクスといわれてもピンと来ないかもしれませんが、洗面やひげそりに必要な照度や食卓、調理台、流し台などで推奨される照度が300ルクスとされています(JIS推奨照度一覧)。
正確な照度は照度計を使って測ることができますが、スマートフォンのアプリで簡易的に照度計測ができるものもあります。
事務作業のうち、文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のないものは、「付随的な事務作業」とされ150ルクス以上が求められます。
資料をファイルに入れる作業や来客受付などがこれに当たります。
今回の改正の背景にあるのは事務所における高齢者労働者の増加です。
多様な人材が快適に働けるよう、個々の労働者に眼鏡などで視力矯正を促すとともに、事務所の明るさを適切に確保するようにしましょう。
トイレ
事業場に設置するトイレは、作業場の規模にかかわらず、男性用と女性用に区別して設置することが原則とされており、男女共用のトイレしかない事業場は法令違反とされてきました。
ところが、小規模な事業場では男女別のトイレを設けることが困難な場合が多いです。
そこで今回の改正で、同時に就業する労働者の数が常時10人以内である場合は独立個室型のトイレを設ければ足り、例外的に男女別による設置は要しないものとされました。
「独立個室型のトイレ」とは、四方が壁で囲まれ、扉を内部から施錠できる構造のトイレをいいます。
仕切り板や、上部や下部に隙間がある壁で仕切られたトイレは独立個室型とはいえません。
事業場に男女共用のトイレしか設置されておらず、そのトイレが独立個室型でない場合には、独立個室型のトイレへの改修を行う必要があります。
すでに従来の設置基準を満たす男女別のトイレを設置している事業場でわざわざ独立個室型のトイレを設置する必要はありません。
この改正を巡っては、女性専用のトイレを設置しないことを容認するものであるとしてSNS等で批判が起こりました。
しかし、スペースやコストの関係で男女別のトイレを設置することが困難な小規模の事業場にとってはありがたい改正だと言えるでしょう。
最後に
これらの他にも、救急用具の内容、シャワー設備、休憩の設備、作業環境測定などに関する規定が改正されました。
改正内容についてご質問がありましたらお気軽に弁護士にご相談ください。