最近、中小企業をターゲットとした、いわゆる「求人広告詐欺」が増えており、弊所にも複数のご相談をいただいています。
今回は、求人広告詐欺の手口、対処法、そもそも求人広告詐欺の被害に遭わないためにするにはどうしたらいいかについて、説明していきます。
求人広告詐欺なのか?気付くべきポイント
求人広告詐欺を行う業者は様々ですが、その手口は、共通していることが少なくありません。
「詐欺かもしれない」と気付くために、まずは求人広告詐欺の特徴を押さえておきましょう。
- 「〇週間無料」と、無料期間が定められている。
- 電話口では、「無料期間中に解約すれば、料金は発生しない。」「期間満了前に、事前に解約の有無を確認するので、安心」などの説明を受け、申込書をFAXするよう催促される。
- (事前の解約方法が末尾に記載された)チラシが届くこともある。
- その後、無料期間が経過してから、突如、数十万円の請求書が届く。理由は、自動更新がなされたため。 確認すると、たしかに、契約書には「〇日までに解約しなければ自動更新となる」旨の記載がある。数日前に届いたチラシの末尾にも、解約方法について記載されている。小さい文字で書かれていることも多い。
- また、契約後、相手方が管理するHP上で、無料期間中、自社の広告が掲載されており、活動実績もある(HP上に広告を掲載したとのメールが届くこともある)。
- ここまで確認して、被害者としては、「契約書もある。解約方法も記載されている。事前に解約方法について記載されたチラシも届いている。活動の対価も支払わなければならない。事前の解約について見過ごしてしまった自分の責任である。請求金額も弁護士に相談するほどの額ではないように思う。」などと考えてしまい、そのまま、支払ってしまう。
契約後、請求後の対処法
以上のような経緯で求人広告の会社から請求書が届いても、すぐに支払ってはいけません。
「契約は成立しているし、契約書には解約方法についても明記されている。期間満了前にも解約方法について記載されたチラシも来ている」といった事情から、支払わなければならないのではないかと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、契約書の文言を見落とした以上は自己責任であるという心理を悪用した詐欺である可能性も少なくありません。
仮に詐欺ではないとしても、錯誤取消し(民法95条第1項)などにより支払拒絶をすることは、決して悪いことではなく、正当な法的主張といえます。
この手の求人広告詐欺では、弁護士名義で内容証明を送り、法的な主張を行うと相手方は請求してこなくなることが少なくありません。
内容証明郵便の内容-法的主張の例
内容証明郵便に記載する内容として、次のような主張が考えられます。
錯誤取消し(民法95条第1項)
契約の重要な部分に錯誤がある場合は、仮に契約書にサインをしていたとしても、錯誤を理由として契約を取り消すことができます。
詐欺取消し(民法96条第1項)
詐欺により契約をしてしまった場合は、その契約を取り消すことができます。
契約不成立
契約当事者の認識の食い違いが著しい場合などは、そもそも双方の合意は成立していないという主張もありえます。
留意点
最近は内容証明を送っても反論してくる業者が増えてきました。
最初に中途半端な内容の主張をしてしまうと、相手から反論されたときに適切な再反論ができなくなるおそれがあります。
弁護士にご相談いただき、事実確認や証拠関係の整理をした上で、相手方から反論が来たとしても毅然とした態度で臨むことができるような主張を行う必要があります。
そもそも騙されないためには?
最後に、詐欺的な手口に騙されないためにはどうしたらいいかご説明します。
疑問に思ったら、些細な事でも弁護士に相談
今回ご紹介した詐欺の手口に似ていると感じた場合、そうではないとしても直感として支払うことに納得できない部分がある場合は、法的にも支払うべきか否かにつき疑義があることが少なくありません。
このようなときは、早めに弁護士にご相談ください。
どのような法的主張が可能か検討いたします。
契約締結前は、すべて、弁護士に相談
求人広告詐欺の手口が、今後も同じ形で続くとは限りません。
さらに巧妙な形で請求されたり、そもそも全く別のスキームで詐欺の被害にあうおそれすらあります。
大事なことは、契約内容をよく精査すること、無料の場合はとくに気を付けること、まとまった金員を払うときは慎重になることです。
弊所の顧問サービスの活用方法
求人広告詐欺に限らず、契約を締結するときには弁護士をご活用ください。
弁護士に相談すべき事案か悩まれるケースもあるかもしれませんが、早めにご相談いただくことがトラブルの予防に繋がります。