ある動画が話題に

感動の動画?

2018年の秋、「【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める。」というタイトルの動画がYouTubeに投稿され、話題を呼びました。

退職する部下に上司が花束を渡し、「3年間、お疲れさまでした」と声をかけるシーンからその動画は始まります。

花束を渡した上司は「入社したときから声は小さいし、要領は悪いし、苦労ばかりだった。」と、部下との思い出を振り返ります。

取引先で並んで頭を下げたこともあった。一緒に飲みにいって酔いつぶれたこともあった。大事なプレゼンを一人でやり遂げたときには成長を感じさせてくれた。

あっという間の3年間。私は、いい上司だっただろうか?

若い部下の指導に苦労した経験がある管理職の方なら、ここで思わずしんみりしてしまうことでしょう。

部下のホンネは…?

警告

ところが、動画には続きがあります

ふいに何者かに突き飛ばされ、上司はしりもちをつきます。

勝手にいい話にすんな!うちの会社、次から次に若手が辞めて…。いい加減に気づけよ!!

大声でまくしたてるのは、会社に残る若手社員です。

これをきっかけに、社内は大乱闘となります。

思いもよらない状況に呆然とするしかない上司。

さっきまで感無量という面持ちだった部下も、受け取ったばかりの花束を投げ捨てて上司に襲い掛かります。

実はこれ、中小企業基盤整備機構による生産性向上のキャンペーン動画だったのです。

YouTubeでは「若者の気持ちを映像化してくれてありがとう。」というコメントが多くの「いいね」を集めています。

拡大する「感覚のズレ」

若手社員は「好んで苦労することはない」と考えている

公益財団法人日本生産性本部と一般社団法人日本経済青年協議会は、平成30年度の新入社員を対象に「働くことの意識」に関する調査を行いました。

調査結果には1980年代半ば以降に生まれた「ミレニアル世代」の仕事観が如実に表れています。

「働く目的」として最も多かった回答は「楽しい生活をしたい」で、全体の41.1%でした。他方で、「自分の能力を試す」という回答は減少を続け、10.0%で過去最低を更新しました。

「人並み以上に働きたいか」という設問に対しては、31.3%が「人並み以上」と回答したのに対し、61.6%が「人並みで十分」と回答し、両者の差は調査開始以来最大となりました。

「若いうちの苦労についてどう思うか」という設問の回答は、「好んで苦労することはない」が平成23年度から増加を続け、今回の調査では34.1%で過去最高となりました。

人手不足時代を生き抜くために

このように、「ミレニアル世代」は個人のライフスタイルに合った柔軟な働き方を重視しており、「仕事を通じて成長したい」「自分の能力を試したい」といった価値観は過去のものになりつつあることがわかります。

厚生労働省によると、就職してから3年後の離職率が中卒7割、高卒5割、大卒3割に達しています(いわゆる「シチゴサン現象」です。)。

「今時の若者」を嘆くばかりで今までのやり方に固執していては、人材不足時代を乗り越えることは困難でしょう。

退職する若手社員が多くて困っているという管理職や経営者の方がもしいらっしゃいましたら、一度、「感覚のズレ」に向き合ってみてはいかがでしょうか。

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