「取引先がさまざま理由をつけて代金を払わない」
このようなご相談は非常に多いです。
債権回収のご相談をいただいたときに弁護士が最初に検討するのは、「そもそも法律的に権利行使が可能なのか?」という点です。
次に検討するのが、回収可能性です。
権利行使が可能だとしても、相手方に資力がなく回収ができなければ意味がないからです。
今回は、債権回収の手段や、どこまでが自社でできてどこから弁護士に依頼しないとできないのかについてご説明します。
債権回収の流れ
債権回収の手続は、次のような流れで行われるのが一般的です。
請求
当然ですが、まずやるべきことは「請求」です。
通常、請求書を送付します。
まず葉書、FAXや普通郵便での請求書を送付し、それでも支払いがないときに内容証明郵便を送付するのが一般的です。
弁護士名義で請求書を送付したり、「○○日以内に対応しなければ法的手続きをとります」といった文言を入れることもあります。
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内容証明郵便を含めて請求書の発送は自社でも可能ですが、弁護士にご依頼いただき、名義を弁護士にすると相手方に本気度が伝わります。
交渉
請求後、相手と連絡が取れる場合には、電話もしくは書面にて交渉を行います。
権利行使の可否だけでなく、相手方の支払い能力を見極めることが重要になります。
- 弁護士に依頼!?
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当然、債権回収のための交渉は自社でも可能です。
ただ、他人のために相手方と交渉をすることは弁護士法違反となります。
不動産業等、当事者の代理で業務を行う業種については要注意です。
また、通常は考えにくいですが、請求のやり方によっては脅迫罪や恐喝罪などの犯罪となる場合があることも知っておくべきでしょう。
裁判手続
相手方と連絡が取れない場合や、交渉において双方の主張が乖離している場合には、裁判手続に移行します。
裁判手続には、支払督促手続、調停手続、通常訴訟手続があります。
重要なのは、資産について差押え等の強制執行を行うためには、原則として裁判手続を経なければならないという点です。
支払督促
支払督促とは、金銭債権等の請求について、申立てにより理由があると認められる場合、裁判所が相手方に支払督促を発するものです。
相手方が2週間以内に異議の申立てをしなければ、仮執行宣言が出され、これをもとに強制執行することができます。
ちなみに、異議申し立てがなされると、通常の訴訟手続きに移行してしまいかえって時間がかかる場合があります。
つまり、相手が争わないと予想される場合で早期に強制執行をしたい場合に有効です。
民事調停
民事調停とは、訴訟と異なり裁判官の他に一般市民から選ばれた調停委員が加わり協議による合意を目的とすることを前提とした手続です。
取引先との関係を悪化させたくない場合や、非公開手続でやりたい場合など有効です。
少額訴訟
60万円以下の金銭債権の請求については、少額訴訟手続が利用できます。
事案が複雑でない事件等が前提とされており、1回の審理で判決が出るというスピードがメリットです。
通常訴訟
上記以外の場合の裁判手続です。
訴訟の提起は請求額が140万円以下は簡易裁判所、140万円を超える場合には地方裁判所で行います。
複数回の審理を経て裁判となり、少なくとも3、4回程度は審理を重ねることや、審理間は1、2ヵ月期間が空くことからすれば時間のかかる手続ですので、スピードが重視される債権回収にはそぐわない場面も多いです。
- 弁護士に依頼!?
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裁判手続は弁護士に依頼せずとも自社でできます。
特に支払督促や民事調停等は自社でも対応できる場合が多いでしょう。
通常訴訟等については、事案が単純なものでなければ弁護士にご依頼ください。
信用調査
請求や交渉を行ったり、裁判を提起して、実際に相手が払ってくれれば問題はありません。
しかし、相手方に支払能力がない場合や、相手方が支払いを拒絶した場合、そもそも連絡がつかない場合などには、強制執行せざるをえず、そのための財産調査が必要になることもあります。
判決をとっても自動的にお金になるわけではなく、相手方に資産がなければ、ただの紙になってしまうおそれがあります。
相手方からの調査
相手方が自身の資産をわざわざ教えてくれることは少ないと思いますが、取引先、取引銀行、勤務先(個人の場合)などを教えてくれる場合もあります。
その他の調査
本人以外の取引先、関係者からの調査や、ホームページ(取引銀行を記載している場合もあります)、SNS(Facebook、Twitter等)の調査が功を奏する場合もあります。
探偵事務所などを用いる方法もあるでしょう。
法人登記、不動産登記、住民票の取得
法人登記を取得することで、資本金額や代表者の住所等が分かります。
また、不動産登記を取得することにより所有している不動産が、住民票を取得することによって家族関係や居住地等が判明します。
弁護士会照会による預金の調査
弁護士会照会という手続を利用することにより、特定の銀行に対して相手方の預金口座の有無を確認することができます(ただ、一行ずつ約7,000円程度の手数料がかかるため、ある程度銀行を特定した上でするのが通常です)。
銀行のなかには、個人情報保護等を理由に、弁護士会照会手続によっても拒否していた銀行もありましたが、最近3メガのなかで唯一拒否していたみずほ銀行も2017年1月にこれに応じることとなりましたし、現在は紹介を拒否される銀行はほとんどありません。
弁護士会照会による生命保険の調査
相手方が解約返戻金のある生命保険を契約している場合、生命保険契約を解除し解約返戻金を差し押さえることができます。
生命保険契約加入の有無についても、弁護士会照会を利用することによって、生命保険協会に照会を求めることができます。
- 弁護士に依頼!?
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住民票の取得、判決後の預金口座、生命保険の調査は、職務上請求や弁護士会照会などの手続を利用する必要がありますので、弁護士に依頼しなければできません。
※なお、当事務所では調査手続のみの依頼はお受けできません。
最後に
以上のように、いくら裁判で判決を獲得しても、相手方が払ってくれなければ強制執行の手続を取らざるをえない場合があります。
また、強制執行をしても1円も回収できない場合もありますので、事前の財産調査は必要です。
請求が契約に基づく場合には、契約段階に担保を付けておくなど事前の対策も必要でしょう。
- 債権を回収したいがどこまでできるのか?
- 債権回収で問題にならないための契約書はどう作成すべきか?
- 債権保全のために有効な契約条項とは?
- 請求文書のフォーマットを作成してほしい。
などについては、お気軽に弁護士にご相談ください。