日々の業務の中で、契約書や領収書などの書類に収入印紙を貼る場面があり、うっかり貼り忘れてしまったこともあるかと思います。
この記事では、収入印紙を貼り忘れたり、消印を忘れたりした場合にどうなるのか、節税できるのか、税額などについて解説します。
もし収入印紙を貼り忘れてしまったら契約書は無効になるの?
普段は作らない契約書を作り終わってほっとしていたら、収入印紙の貼り忘れに気付いた。
こんなとき、契約書を作り直さなければならないのでしょうか?
作り直す必要はありません。
収入印紙を貼り忘れたからといって、契約書自体が無効になることはないからです。
罰金などのペナルティはあるの?
過怠税が課せられ、本来納めるべき印紙税額の3倍の金額を納めなければなりません。
契約書を大量に作成する業種では、収入印紙の貼付けが不要だと思っていた文書について、税務署から貼付けが必要と指摘され、多額の過怠税が課せられてしまったというケースもあるようですので、注意が必要です。
なお、救済措置が用意されており、税務調査を受ける前に自主的に申告した場合には、1.1倍に軽減されます。
もし消印を忘れてしまったら・・・
契約書は無効になるの?
消印を忘れたというだけで、契約書自体が無効になることはありません。
罰金などのペナルティはあるの?
過怠税が課せられます。
ただし、貼り忘れの場合と異なり、本来納めるべき印紙税額の2倍の金額を納めれば足ります。
有効な消印と無効な消印
有効な消印
消印が有効になるためには、以下の2点を満たす必要があります。
- 文書の作成者、代理人、使用人、その他の従業者の印章による押印又は署名
- 文書と収入印紙の彩紋(絵の部分)にかかるようにして押印又は署名する
消印は、印紙の再使用を防止するためのものなので、契約書に押した印章と同じである必要はありません。
氏名・名称などを表示した日付印、役職名などを表示したゴム印などでもよいとされています。
署名する場合も、氏名をフルネームで書く必要はありません。
通称や商号のようなものでも足りるとされます。
無効な消印
次のように、単に「印」と書くだけ、斜線を引いただけでは、消印として認められません!!
節税できるの?
通常、2通ある契約書の両方に貼る必要があり、収入印紙が2枚必要になりますが、これを1枚で済ませる方法があるのです。
コピー・FAXの利用
契約書の原本・正本を2通作って契約当事者がそれぞれ1通ずつ保管しますと、収入印紙が2通分必要になります。
しかし、原本・正本を1通だけ作ってコピーをとり、契約当事者の一方がそのコピーで保管するとした場合は、収入印紙をコピーに貼る必要はありません。
また、原本・正本をFAX送信した場合も、そのFAXされたものに収入印紙は不要です。
ただし、このコピーやFAXされた文書に署名・押印したり、原本・正本と相違ないことを証明する一文を入れたりすると、収入印紙が必要になりますので、注意が必要です。
電子メールの利用
契約書をPDFファイルなどに変換してメールに添付して送信する場合、この送信したファイルに収入印紙を貼る必要はありません。
メールを受け取った当事者がプリントアウトしたとしても、そのプリントアウトした文書はコピーと考えられるため、やはり、収入印紙は不要です。
ただし、メール送信した後に改めて文書を持参するなどして現実に契約書を交付する場合は、収入印紙が必要になります。
「契約書」という名前にしなければ収入印紙を貼らなくて良い?
ダメです。
協定書、約定書、念書、請書など、名称が何であれ、実質的に見てその文書によって契約の成立が証明されるものであれば、契約書として扱われます。
つまり、一方が申込みをし、他方が承諾したという事実を証明するために作成された文書であれば、契約書として扱われるということです。
請負契約書なのか、物品・不動産の売買契約書なのかが分からない
実際の取引の中では、請負契約なのか売買契約なのか、判別が難しいものが多々あります。
印紙税法では、請負契約か売買契約かの区別については、契約当事者の意思が、仕事の完成に重きをおいているか、物の所有権の移転に重きをおいているかによって判断しています。
請負契約
建物の建築や道路の建設のように、注文者が指示する一定の仕様・規格などに従って、製作者が工作物を建設する場合
大型機械の取付工事のように、ある物品をある場所に取り付けることで所有権を移すことを内容とする場合
売買契約
テレビを買った際のアンテナ取付工事など、ある物品をある場所に取り付けることで所有権を移すことを内容とするが、取付け行為が簡単で、特別の技術を必要としない場合
カタログに載っている製品(機械、家具など)の製作など、あらかじめ一定の規格で統一された物品を、注文を受けてから製作者の材料で製作して供給することを内容とする場合
請負契約書なのか、委任契約書なのかが分からない
あるサービスを1万円以上の対価で提供するという契約書を作成した場合に、それが請負契約書であれば収入印紙を貼らなければなりませんが、委任契約書であれば収入印紙は不要です。
そのため、請負契約か委任契約かの区別が問題となります。
印紙税法における「請負」とは、一方が仕事の完成を約束し、相手方がその仕事の完成に対して報酬を支払うことを内容とする契約とされます。
典型的には、建物の建築、道路の建設、機械の製作、機械の修理、建物の清掃、舞台への出演などの契約です。
他方で、委任契約は、当事者間に信任関係があり、受任者に一定の自由裁量が認められているものです。
典型的には、医師の診療行為や弁護士業務などがあげられます。
収入印紙が必要な文書と印紙の額が知りたい
収入印紙を貼る必要がある文書のことを課税文書といいますが、具体的には印紙税法の別表第一に列挙されている20種類のことをいいます。
国税庁ホームページの「印紙税額の一覧表」を見ると確認できます。
以下では、課税文書のうちの重要なものと印紙の額を記載します。
1号文書
運送契約書、不動産売買契約書、土地賃貸借契約書、金銭消費契約書など
契約金額 | 税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上~10万円以下 | 200円 |
10万円超~50万円以下 | 400円 |
50万円超~100万円以下 | 1千円 |
100万円超~500万円以下 | 2千円 |
500万円超~1千万円以下 | 1万円 |
1千万円超~5千万円以下 | 2万円 |
5千万円超~1億円以下 | 6万円 |
1億円超~5億円以下 | 10万円 |
5億円超~10億円以下 | 20万円 |
10億円超~50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
土地建物売買契約書など、不動産の譲渡に関する契約書で、平成26年4月1日から平成30年3月31日までに作成されたものについては軽減措置の適用により、以下の税額となります。
契約金額 | 税率 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上~50万円以下 | 200円 |
50万円超~100万円以下 | 500円 |
100万円超~500万円以下 | 1千円 |
500万円超~1千万円以下 | 5千円 |
1千万円超~5千万円以下 | 1万円 |
5千万円超~1億円以下 | 3万円 |
1億円超~5億円以下 | 6万円 |
5億円超~10億円以下 | 16万円 |
10億円超~50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
2号文書
工事請負契約、物品加工注文請書、広告契約書など
契約金額 | 税率 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上~100万円以下 | 200円 |
100万円超~200万円以下 | 400円 |
200万円超~300万円以下 | 1千円 |
300万円超~500万円以下 | 2千円 |
500万円超~1千万円以下 | 1万円 |
1千万円超~5千万円以下 | 2万円 |
5千万円超~1億円以下 | 6万円 |
1億円超~5億円以下 | 10万円 |
5億円超~10億円以下 | 20万円 |
10億円超~50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
建設工事の請負に関する契約に基づき作成される請負契約書で、平成26年4月1日から平成30年3月31日までに作成されたものについては軽減措置の適用により、以下の税額となります。
契約金額 | 税率 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上~200万円以下 | 200円 |
200万円超~300万円以下 | 500円 |
300万円超~500万円以下 | 1千円 |
500万円超~1千万円以下 | 5千円 |
1千万円超~5千万円以下 | 3万円 |
5千万円超~1億円以下 | 3万円 |
1億円超~5億円以下 | 6万円 |
5億円超~10億円以下 | 16万円 |
10億円超~50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
7号文書
売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書など、継続的取引の基本となる契約書
一律4千円
ただし、契約期間が3ヵ月以内、かつ、更新の定めがない場合は、収入印紙が不要です。
15号文書
債権譲渡または債務引受に関する契約書
契約金額 | 税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上 | 200円 |
契約金額の記載なし | 200円 |
17号文書
領収証、領収書、レシート、(金銭の)受取書、預かり書
金銭を受け取ったことを示すために、請求書や納品書などに「代済み」、「了」と書いた場合であっても該当するので注意が必要です。
なお、営業に関しない金銭の受取書であれば、収入印紙は不要です。
契約金額 | 税額 |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上~100万円以下 | 200円 |
100万円超~200万円以下 | 400円 |
200万円超~300万円以下 | 600円 |
300万円超~500万円以下 | 1千円 |
500万円超~1千万円以下 | 2千円 |
1千万円超~2千万円以下 | 4千円 |
2千万円超~3千万円以下 | 6千円 |
3千万円超~5千万円以下 | 1万円 |
5千万円超~1億円以下 | 2万円 |
1億円超~2億円以下 | 4万円 |
2億円超~3億円以下 | 6万円 |
3億円超~5億円以下 | 10万円 |
5億円超~10億円以下 | 15万円 |
10億円超 | 20万円 |
受取金額の記載なし | 200円 |
売上代金以外の金銭の受取書
借入金や担保金の受取書、保険金や損害賠償金の受領書など
契約金額 | 税額 |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
5万円 | 200円 |