2018年6月1日、最高裁で「長澤運輸事件」と「ハマキョウレックス事件」という2つの事件の判決が出されました。
今回問題になった点は、「有期契約労働者と正社員(無期契約労働者)の格差の適法性」です。
簡単にいえば、「正社員には〇〇手当があるのに、非正規社員には〇〇手当がない。これって不合理な格差ではないか?」というような問題です。
ここでは詳細に述べませんが、結論としては、長澤運輸事件でもハマキョウレックス事件でも、皆勤手当についての格差は不合理な格差であると判断されました。
勤務内容等が同様の場合には、格差を設ける合理的な理由は見出しづらいため、皆勤手当の格差自体は違法となる可能性が高いでしょう。
また、長澤運輸事件では家族手当についての格差は不合理な格差とはいえないとされました。
長澤運輸事件で正社員だけ家族手当が支給される理由は、正社員は非正規社員と異なり、幅広い世代の労働者が存在し、そのような正社員に住宅費及び家族を扶養するための生活費を補助するためです。
ただ、これで他の企業も家族手当の格差は問題ないと考えるのは危険です。
一般的な企業にこれは当てはまるでしょうか?
長澤運輸事件の非正規社員は定年退職後の再雇用の場合であり、定年後再雇用ではなく非正規社員も幅広い世代の労働者が存在する場合にはその理由は通りづらいでしょう(一般的に家族手当は正社員には転勤等があることを理由に支給されます。)。
まずこの記事を読んだ皆様は、手当の内容を再確認してください。
そして、その手当が正社員にはあって契約社員にはない場合、その理由を説明できるかを考えてみてください。
「正社員だから」以外の説明がうまくできない場合などは、どなたかにご相談されることをおすすめします。
今回の長澤運輸事件、ハマキョウレックス事件自体は、内容に批判もあり、手当の格差を杓子定規に判断するのは危険です。
そして、今回の最高裁判決では、個別の手当ごとに不合理かどうかが判断されており、問題となるハードルは下がっています。
今回の事件が賃金規定の見直しのきっかけになればと思います。