あなたの会社には外国人労働者はいらっしゃいますか。
飲食店やコンビニエンスストアで働いているイメージの強い外国人労働者ですが、最近では国内の中小企業で働く外国人労働者も多く見られます。
改正出入国管理法の概要
ニュースでも大きく取り上られていますのでご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、平成30年12月8日、改正出入国管理法が成立しました。
深刻な人手不足に対応するため、外国人労働者の受け入れを拡大することが改正の目的です。
今回の改正の最大のポイントは、在留資格の新設です。
外国人が日本で就労するための在留資格は出入国管理法に規定されており、既存の在留資格としては「外交」「法律・会計業務」「研究」「報道」などがありましたが、今回の改正で新たな在留資格として、2段階の「特定技能」が新設されました。
対象業種は、農業、介護、外食、宿泊、建設、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、ビルクリーニング業など14業種が想定されており、今後、業種ごとの運用方針を決定していく予定になっています。
新たに新設された在留資格「特定技能」
- 1号
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【対象】
相当程度の知識または経験を有する技能」を持つ外国人
【要件】最長5年間の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格した者
【ポイント】①在留資格は通算5年間
②配偶者や子どもなどの家族の帯同は認められない
- 2号
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【対象】
1号よりさらに高度な試験に合格し、熟練した技能を持つ外国人
【要件】1号に加えてより高度な試験に合格した者
【ポイント】①在留資格は1~3年ごとの期間で更新可能
②更新回数に制限はなく事実上の永住も可能
③配偶者や子どもなどの家族の帯同も認められる
要件の緩やかな1号だけでも、5年間で最大34万人の受け入れが想定されており、今後ますます外国人労働者が増えることは確実と言えます。
では、外国人労働者を雇用する際に雇用主はどのような点に注意すべきでしょうか。
外国人労働者を雇用する際の4つのポイント
在留カードの確認
在留カードとは、新規の上陸許可、在留資格の変更許可や在留期間の更新許可など在留資格に係る許可の結果として中長期在留者に対して交付されているものです。
在留カードには、氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間、就労の可否などの情報が記載されています。
在留カード以外では、旅券(パスポート)上の上陸許可証印、就労資格証明書等によっても在留資格や在留期間を確認することができます。
当然ですが、在留資格で認められた資格の範囲以外の業務に従事させることはできませんし、雇入れの時点で在留期間がいつまでなのかという点は雇用主側でも正確に把握しておく必要があります。
詳細は割愛しますが、「文化活動」「留学」「研修」「短期滞在」などの在留資格では就労は認められていないので特に注意が必要です。
万が一、不法就労にあたる外国人を雇用してしまった場合、外国人労働者本人は強制退去処分に処せられるだけでなく、不法就労と知りながら雇用した雇用主は入管法違反として3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または科料に処せられることがあります。
雇用後に不法就労が発覚した場合には、直ちに、出勤停止命令を下したうえ、場合によっては解雇を検討することになります。
ハローワークへの届出
外国人を雇用する事業主は、外国人の雇い入れ、離職の際に、その氏名や在留資格について確認し、ハローワークへ届出を行うことが義務づけられています。
- 雇用対策法28条
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【要件】
1号に加えてより高度な試験に合格した者
【ポイント】事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その者の氏名、在留資格(出入国管理及び難民認定法第二条の二第一項に規定する在留資格をいう。次項において同じ。)、在留期間(同条第三項に規定する在留期間をいう。)その他厚生労働省令で定める事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
外国人に適用される法律の確認
憲法14条や労働基準法3条は、国籍による差別を禁止しています。
- 憲法14条
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すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
- 労働基準法3条
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使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
外国人であるという理由だけで、賃金や労働時間その他の労働条件について日本人と異なる取り扱いをすることはできませんし、日本人と同様に外国人にも、労働基準法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法、最低賃金法等の各法律が適用されます。
雇用保険についても、日本人と同様に、条件を満たす場合には被保険者として取り扱いをしなければなりません。
外国人労働者への特別の配慮
日本人労働者と共通する手続を行う場合や同じ条件下で雇用する場合であっても、外国人労働者を雇用する事業主が特に配慮が必要な場面も多くあります。
たとえば、日本人労働者にも共通することですが、雇用後に労働条件をめぐるトラブルを最小限に抑えるために、雇入れの際には労働条件通知書を作成し本人に交付することが大切です。
このとき、日本語があまり流暢でなく、日本後の読み書きが得意でない外国人労働者もいるかもしれません。
そのような外国人労働者に対し、日本人労働者と同様に労働条件通知書を交付しても内容を正確に理解してもらえないことがありますので、外国人労働者に対しては母国語が併記された労働条件通知書を交付するといった工夫が必要です。
厚生労働省のウェブサイトでは、外国人労働者向けの母国語の労働条件通知書の書式が掲載されていますので、参考になさってください。
また、特に危険を伴う作業を行うことがある場合には、標識や掲示についても、母国語を併記したり、写真やイラストを用いたりする等して外国人労働者も確実に理解できるような工夫が必要になります。
加えて、外国人労働者の場合には言語や慣習の違いを理由に、事業主としては当然と考え、他の日本人労働者も当然のことと認識していることでも、外国人労働者が異なる認識を有していることも多くあると思われます。
日本人と外国人労働者の間にはこのような認識のギャップがあることを念頭に置いて、日本人労働者より細かい説明や配慮が必要となるでしょう。
最後に
少子高齢化により外国人労働者の活用のニーズへ年々高まりを見せています。
外国人労働者も日本人労働者と同様の給与や待遇を保障することで、日本における労働が外国人労働者にとって魅力ある場所と感じてもらえるようにすることはとても大切です。
今回改正された出入国管理法の内容を正しく理解し、外国人雇用者を正しく雇用してトラブルを未然に防止し、外国人労働者を企業における大切な戦力として有効に活用してみてはいかがでしょうか。