契約書にすべてを書く必要はない?
今回はサブスクリプションサービスの契約における注意点を紹介します。
前提として、契約書に全ての内容を記載する必要は必ずしもありません。
SaaS(Software as a Service「サービスとしてのソフトウェア」)などの場合には、契約書だけでなく、別途利用規約が適用されることも少なくありません。
その場合は、利用規約を作成したうえで、契約書には「規約が適用されることを前提とする」という条項を規定します。
また、サブスクリプションサービス契約においては、プランに応じてサービス内容や料金等が異なり、かつ、その内容は随時変更していくことを想定している場合も多いです。
そのような場合は契約書にすべてのサービス内容や料金を規定するのではなく、別紙形式にすることが多くあります。
そうすることにより、契約内容が変更されても別紙等を修正すればよく、対応が容易になるからです。
具体的には、
- 「本サービスの詳細は、別紙A記載のとおりとする。」
- 「本サービスの利用料金は、別紙B記載のとおりとする。」
といった条項を設けることになります。
サービスの範囲はどこまで?
サブスクリプション契約書において重要なのは、サービスの範囲を明確に定め、提供者として履行すべき義務を明確にしておくことです。
サービス内容を抽象的に規定しまうと、広範な要求への対応を強いられる可能性もありえます。
また、利用者がサービスを利用するにあたっての禁止行為が定められます。
サブスクリプションサービスでは、提供するサービス、ソフトウェア等のリソースを利用者で共有する形になるため、利用者間相互の利益を確保するという意味でも禁止規定が必要になります。
契約内容にもよりますが、サービスレベルについての条項(SLA, Service Level Agreement)を定める場合もあります。
これは提供者の義務ではなくサービスの一環として規定されるもので、サービスレベルを下回った場合でも損害賠償責任を負わないといった内容の規定が設けられることが多いです。
契約期間
サブスクリプションサービス契約は、基本的に継続的な契約を前提にしていますが、契約書においては一定の契約期間が定め、「契約期間終了前◯ヶ月前までに更新しないとの通知をしない限り、同一条件で更新する」といった自動更新条項を設けることで解約のリスクを下げる手法が用いられることが多いです。
解除、中途解約条項(終了原因)
サブスクリプションサービス契約は継続的な契約ですので、中途解約を認めるかどうか、どのような場合に解除ができるかについて、提供者側、利用者側双方の視点から定めておく必要があります。
また、契約が終了した場合には、契約期間中に提供していたコンテンツなどが利用できないことなどを明記しておく必要があります。
サービス内容の変更
サブスクリプションサービスにおいては、運用開始後にサービスの内容が変更されることもあります。
それがサービスのレベルが上がる(サービスの範囲が広がる)内容であれば問題は起こりにくいのですが、その逆の場合にどうするかという点を契約内容に定めておく必要があります。
SaaSなどでは、サービス内容の変更、休止、廃止などがあることを契約・規約等で定めていることが多いです。
民法改正の影響(2019/11/18追記)
2020年の民法改正により定型約款の規定が新設されました(改正民法548条の2~4)。
SaaSなどのサブスクリプションサービスの利用規約は改正民法における「定型約款」に該当するものが多いです。
改正民法では、定型約款の変更に際しての制限や、変更に関する周知義務について規定されています。
具体的な変更の可否や規定の内容については個別にご相談ください。
参考:意外と身近な定型約款(2020年4月改正!まだ間にあう?改正民法直前対応②)
最後に
サブスクリプションサービスと一言で言ってもSaaSに限らず、様々なサービスがあります。
また、サービスを開始するにあたり、契約書の内容のみならず法律の規制にも注意する必要がございます。
サブスクリプションサービスに関する契約書、利用規約の作成については、ぜひ弁護士にご相談ください。