増税に関して契約書の対応が必要か?

消費税

7月21日に参議院選挙が終わり、予定されていた消費税増税は10月1日から実施されそうです。

消費税が8%から10%に増税するにあたって、契約書の確認も必要です。

表示の方法に応じて、対応を確認します。

※正確には、消費税率が6.3%から7.8%に、地方消費税が1.7%から2.2%となり合計して8%から10%となりますが、ここでは「消費税」と記載します。

税抜表示

「●●円(税別)」

このような記載方法を外税表示といいます。

たとえば契約書で代金の記載が「100,000円(税別)」とされている場合です。

この場合、増税後は何ら問題なく110,000円を請求することができます

なお、対消費者との関係では総額表示義務がありますが、ここでは事業者間における取引を前提にご説明します。

税込表示

「●●円(税込)」

このような記載方法を内税表示もしくは総額表示といいます。

たとえば契約書の代金の記載に「108,000円(税込)」とされている場合です。

この場合、増税後に110,000円を請求することができるのでしょうか。

「108,000円(税込)」という表示は、100,000円に消費税8%分である8,000円を足して請求していると考えるのが自然です。

となると、消費税が増税されるとすれば、100,000円に消費税10%分を足した110,000円を請求できると解釈するのが合理的な解釈といえると思われます。

もっとも契約書の文言解釈で揉めることはありえるため、いずれでも解釈できるような文言は避けるべきであり、無用な争いを避けるためにはこの後の「対策」でご説明するような条項を定めるべきでしょう。

消費税転嫁対策特別措置法

ちなみに、増税分の請求に対して「税込価格表示であるから」という理由のみで増税分の請求に対して応じない行為は、合理的な理由がない限り「買いたたき」として消費税転嫁対策特別措置法において禁止されています。

消費税転嫁対策特別措置法の対象となるのは、特定事業者の特定供給事業者に対する行為であり、それぞれ下記のように定義づけられています。

特定事業者
  • 大規模小売事業者
  • 特定供給事業者から継続して商品または役務の提供を受ける法人事業者
特定供給事業者
  • 大規模小売事業者に継続して商品または役務を供給する事業者
  • 資本金等の額が3億円以下である事業者
  • 個人事業者等

資本金3億円以下の中小企業が継続して取引先法人に商品または役務提供をする場合にはこれに該当するので、増税分の請求に応じない場合には、同法の定めを指摘することも考えられます。

詳しくは公正取引委員会のサイトをご覧ください。

対策

契約書

すでに契約書を締結している場合には、10月1日までに覚書などで契約書の変更手続を行うことが考えられます。

首相は参院選直後に「今後10年間はさらなる増税は必要ないと思っている」といった発言をしていましたが、今後新たに結ぶ契約については、さらなる消費税の変更の可能性を考慮して対策を検討してもよいでしょう。

具体的には、税抜表示とするか、「税法の改正により消費税等の税率が変動した場合には、当該改正税法施行日以降における上記消費税等相当額は変動後の税率により計算した額とする」といった条項等を追記する方法が考えられます。

最後に

消費税の増税については、軽減税率の点や契約によっていつから増税後の消費税が適用されるのか等について複雑な対応が求められます。

具体的な対策は顧問の税理士などにも相談されることをおすすめします。

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