「昨日まで勤務していた従業員が突然来なくなった」
「携帯電話に連絡してもつながらない」
このようなご経験はありませんでしょうか
最近では「退職代行」というサービスも登場するほど、欠勤や退職をめぐって従業員と会社が対立するケースは多くあります。
では、従業員が会社に何の連絡もなく出勤しなくなってしまった場合、会社はどのように対応をとるべきでしょうか。
まずは連絡を取るよう努める
把握している連絡先に連絡する
数日にわたって無断欠勤をする従業員はある意味覚悟を決めていることが多いと思いますので、簡単に連絡がつくことはあまりないでしょうが、連絡がついた場合には、まずは欠勤の理由を確認するようにしましょう。
連絡は、電話だけでなく、記録に残る手紙やメールで行うことをおすすめいたします。
詳細は後述しますが、欠勤の理由によっては会社が強硬的な態度に出ない方が良い場合もありますので、まずは、冷静に話をするよう心掛けてください。
また、ここで、従業員と話をすることができ、従業員が退職の意思を示した場合には、退職届の提出を求める等、後述する解雇等によらない退職手続きも検討されても良いでしょう。
実家(緊急連絡先)や身元保証人に連絡する
本人に連絡がつかない場合、履歴書等に記載されている緊急連絡先や、身元保証人へ連絡を行ってみる方法もあります。
ただし、あくまで従業員本人と連絡がとれないので取り次ぎを依頼するにとどめ、本人以外の家族や身元保証人との間で、退職に関する話を進めないように注意が必要です。
行方不明の社員を解雇できるか?
では、従業員本人と連絡がとれない状況が続いた場合、会社はそのことを理由に従業員を解雇することができるのでしょうか。
普通解雇は可能?
一般的に、2週間以上無断欠勤が続き、出勤の督促にも応じないという場合には、普通解雇をすることができると考えられています。
あくまで、会社から従業員に出勤の督促を数度にわたり行ったにもかかわらず、従業員がこれに応じなかった場合が想定されていますので、何ら連絡をとらず突然解雇の通知を送ってしまうと、事後的に解雇が無効と判断されてしまう可能性がありますので、ご注意ください。
懲戒解雇は可能?
就業規則等で、無断欠勤を懲戒解雇事由として規定している場合には、普通解雇ではなく懲戒解雇をすることも可能ではあります。
ただし、懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も重い処分で従業員へのデメリットが大きい処分であって、有効と認められるハードルがとても高いものです。
また、本人の意見を聴取しなければならない等の手続き上の決まりがある場合もありますので、専門家に相談したうえ、慎重に行うことをおすすめいたします。
解雇できないのはどのような場合か
もっとも、従業員が長期にわたり無断欠勤をしており出勤の督促にも応じない場合であっても、事後的に、解雇が無効と判断されてしまう場合があります。
たとえば、職場内のセクハラやパワハラなど職場環境の問題を理由に欠勤していると思われる場合、仕事を理由とする肉体的・精神的な不調のために欠勤していると思われる場合などです。
これらについては欠勤に追い込んだ原因が会社側にもありますので、このような事情が判明した場合、会社は従業員が出勤することのできる環境を整えなければなりません。
会社がこの義務を履行しない場合、欠勤期間中の給与を支払わなければならないのはもちろんのこと、債務不履行や不法行為を理由として慰謝料等が請求されてしまうことがあります。
最後に
従業員の欠勤の原因が会社に責任があるものか、直ちに判断がつかない場合も多くあると思います。
そのような場合には、まずは本人の言い分に真摯に耳を傾け、その他関係者からも事情を聴取する、場合によっては医師の診断を指示し診断書を提出させるなど慎重に進めるようにしてください。
会社に責任はないと一方的に決めつけて早まって解雇をしてしまうと、賠償責任を負うなど痛い目にあってしまうのです。
対応にお困りの際は弁護士にご相談ください。