新型コロナウイルスの世界的な流行により、ここ福岡でも緊急事態宣言が出されるなど、未曽有の事態が続いています。
このまま世界的な不況が到来するという憶測もあり、中小企業の経営者の皆様におかれましては、先が見えない状況に不安を抱えていらっしゃる方も少なくないことと存じます。
たくみ法律事務所では、労務問題、売掛金の回収、助成金の申請など、新型コロナウイルスに伴う法律問題に関するご相談に対応しております。
お困り事がございましたらどうぞお気軽にご相談ください。
従業員を休業させた場合の賃金の支払い
さて、弊所では4月8日にテレビ会議システム「Zoom」を利用して新型コロナウイルスの感染拡大に伴う対応についてオンラインセミナーを開催いたしました。
セミナーで解説した内容から、顧問先様からもお問い合わせの多い、従業員を休業させた場合の賃金の支払いについて解説いたします。
休業手当とは
労働基準法には、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中であっても、その平均賃金の60%以上を休業手当として支払わなければならないとされています。
「使用者の責に帰すべき事由」にあたる典型例として、原材料が調達できず工場を止めなければならないようなケースが挙げられます。
他方で、天変地変等の不可抗力による休業は使用者の責に帰すべき事由による休業に該当しないとされています。
新型コロナの場合
では、国が特措法に基づいて緊急事態宣言を行ったことによる休業は「不可抗力」によるものといえるのでしょうか。
結論からいえば、緊急事態宣言を始めとした自粛の要請や指示によって休業が行われたからといって、一律に不可抗力による休業にあたるとされるわけではありません。
たとえば、職種によってはテレワークにより自宅で就業させることが可能な場合がありますし、現在の業務に従事することができなくても他の業務に配置転換させれば従事が可能な場合もあるでしょう。
このように、使用者には労働者を業務に従事させるための努力を尽くすことが求められているのです。
不可抗力による休業にあたるかどうかは、休業を避けるために最大限の努力が行われたかどうかを検討しながら、個別具体的に判断されるとされています。
したがって、従業員が普段どおりに仕事ができる健康状態にあるにもかかわらず、不可抗力であるとして賃金の支払いを拒絶することはリスクが大きいといえます。
雇用調整助成金の利用を
事業の縮小を余儀なくされる事業者が雇用を維持するための措置として、政府は、雇用調整助成金の適用要件や手続を大幅に緩和する特例を実施することを決定しました。
これにより、休業を実施した場合に支払った休業手当に相当する額の最大90%が事業主に助成されますので、積極的に利用を検討することをお勧めいたします。
詳しくは、新型コロナの感染拡大に伴う雇用調整助成金の特例措置をご覧ください。最新情報は厚労省ホームページで
厚生労働省は、ホームページ上において「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」というページを公開し、随時更新を行っています。
労働者を休ませる場合の措置や変形労働制の導入などについて、行政による公的見解がまとめられていますので、まずはこのページを随時確認していただくことをお勧めします。
この記事は、公開時点での情報に基づいて執筆されています。
新型コロナウイルスに関する最新の情報は、厚生労働省ホームページ、首相官邸ホームページ等をご覧ください。