障害者に対する募集

毎年この時期になると保険の特集号が発売される「週刊ダイヤモンド」で、『もはや待ったなし!到来する三流代理店の大淘汰』というショッキングなタイトルの保険代理店の統廃合についての記事を読まれた方も多いと思います(※2020年7月4日号、株式会社ダイヤモンド社)。

事実、保険代理店同士の統廃合は現在進行系で進んでいます。

新型コロナウイルスの蔓延により一度は落ち着いていたMA&の動きが、収束に向かうにつれ再度加速していく可能性があります(もっとも、本コラム執筆の時点では「収束」とは言い難い状況ではありますが…。)

保険代理店のM&Aにおける問題点は?

保険代理店同士の統合においては、「どのような手法を用いて統合するか」という点のみならず、保険代理店の最重要資産である保険契約の移管(移管後更新されない場合の対応等)及び募集人の退職時における対応など注意すべき点が多いです。

また、保険会社との委託契約を締結している以上、保険会社の意向も重要ではあります。

今回は、保険代理店自身で適切に判断するための最低限理解しておくべきポイントを説明します。

代理店事業の評価

基本的な考え方

中小企業のM&Aにおいては事業譲渡や株式譲渡の手法を用いるのが一般的です。

事業譲渡の場合には譲渡する事業の対価として、株式譲渡の場合は譲渡する株式の対価として、その事業(株式)価値の評価が必要になります。

事業価値の評価においては、資産、負債などのバランスシートでの評価を前提として、将来において継続的にどの程度の利益が見込めるかを検討するのが基本的な考え方になります。

保険代理店の主な収入は当然手数料収入なので、その評価がM&Aの対価として算出されることになります。

アーンアウト条項

ただ、手数料についても保険会社との手数料ポイント(評価)が将来的に確定しているわけではなく、今後の代理店経営によって変更が生じることや、そもそも契約自体の更新見込みなど、正確な売上の見込みを立てるのは困難な場合は多いです。

保険契約は募集人との関係性が大きく影響を与えるものなので、M&A後に担当者変更などが生じれば、更新されず別の代理店に契約を取られてしまうというケースもあるでしょう。

そのような場合、更新を見込んで対価を設定したのに、主要募集人の退職などによって更新されないなどという状況もありえます。

その場合には更新率に応じて、追加で対価を支払うという方法も考えられます(「アーンアウト条項」といいます。)

キーマン条項

その前提として、募集人が移籍先にちゃんとついてくるのかといった問題もあります。

多くの保険契約を担当している募集人が別代理店に移籍などをする場合に、多くの保険契約が落ちてしまうことがあります。

そこで買主側としては「キーマン条項」といって、特定の従業員募集人の雇用がM&Aが実行される段階まで継続していることなどを条件にしたりすることもあります。

保険契約の移管に関して

保険代理店(法人)において従業員募集人と顧客にどれほど強い個人的な繋がりがあっても、契約の主体は保険代理店(法人)にあるため、基本的に従業員募集人が退職に際し、従業員が自由に保険契約を持っていくことはできません

とりわけ委託型募集人制度が廃止になり形式的に雇用形態を取っているような保険代理店などでは、その点において従業員と保険代理店間での認識のズレからトラブルとなるケースが多いです。

統廃合に伴う退職時においては、顧客情報などは法人の資産であること、無断での持ち出しは不正競争防止法、個人情報保護法、誓約義務違反などになりうることを説明する必要があります(前提として不正競争防止法上の「秘密情報」、有効な誓約があることの確認が前提であり、その整備が重要です。)

最後に

弁護士吉原

保険代理店同士のM&Aは、保険会社主導で行われることも多く、保険代理店自身としての意向が反映されないまま、実行されているケースも目にします。

M&Aという言葉はどうも大企業同士の合併等がイメージされやすいですが、株式譲渡契約書を作成し対価を支払うだけでもM&Aといえます。

契約書の作成等だけでも遠慮なくご相談ください。

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