内部通報制度のポイントと弁護士を内部通報窓口とするメリット
あなたの会社には内部通報制度はありますでしょうか。
内部通報制度とは、会社の内部の者から企業の不正行為やその他の法律違反行為について報告を受け、調査・是正を図る仕組みをいいます。
この記事では、内部通報制度を導入するべき理由と、内部通報窓口を弁護士に依頼するメリットについてご説明します。
内部相談窓口が重要な理由
内部通報窓口がないとどうなる?
経営者様の中には、「会社の不祥事をわざわざ明るみに出したくない」という理由で内部通報制度の導入に消極的な方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、従業員が不祥事を通報できる仕組みを整備しないことは、かえってリスクのある選択なのです。
それはなぜでしょうか。
労働者の約半数が行政機関や報道機関に通報すると回答
消費者庁が公表した『平成28年度労働者における公益通報者保護制度に関する意識等のインターネット調査報告書』によると、勤務先の不正を知った場合の最初の通報先として「勤務先以外(行政機関、報道機関等)を選択する」と回答した労働者の割合は47%にも上っています。
その理由として、37.0%の人が「通報しても十分対応してくれない」と、33.4%の人が「不利益な取扱いを受けるおそれがある」と回答しています。
社内で不祥事が発覚する前に「世間に訴える」という手法で通報がなされてしまうと、傷口はさらに大きくなり、適切な対処や信頼回復が困難になります。
内部通報制度の機能
内部通報制度には主に3つの機能があります。
1. 不祥事を予防できる
内部通報機能を導入することにより、法令違反や不正行為を行えば内部から通報されるかもしれないという緊張感が生じ、これらの行為を行う動機を減退させることができます。
2. 不祥事の芽を早期に発見できる
内部通報制度を導入することで、不祥事を早期に把握し、被害の拡大を防ぐことができます。
帝国データバンクの調査によれば、2015年度に「粉飾決済」「業法違反」「脱税」などのコンプライアンス違反が判明して倒産した企業は289件で過去最多でした。
コンプライアンス違反を早い段階で発見して適切な対処をすることで、より深刻な事態を避けることができるのです。
3. 不祥事発覚後に信頼を回復できる
不祥事が発見されて早期に適切な対処がなされるということは、企業に自浄作用があることを意味します。
コンプライアンスの遵守が社会的な要請となっている昨今では、自浄作用がある組織であるという事実は企業価値の向上に繋がります。
不祥事を隠さず毅然とした対処する企業だという印象を与え、取引先や従業員の信頼を回復するためにも内部通報制度は重要です。
内部通報制度を設計するときのポイント
これらの機能は内部通報制度が正しく運用されているときに初めて働きます。
続いて、内部通報制度を設計するときに重要なポイントについて解説します。
通報者の保護
内部通報者は徹底して保護しなければいけません。
内部通報を行ったことが社内で知られてしまい、何らかも不利益を受けるのではないかという不安を与えてしまうと、内部通報制度は機能しないためです。
調査の実施に当たっては、該当部署以外の部署にもダミーの調査を行うなどの方法で、通報者が特定されないように十分に配慮する必要があります。
内部通報を行ったものを解雇したり、派遣契約を解除するなどの不利益な取り扱いをすることは絶対に避けなければいけません。
会社と通報窓口の独立
内部通報制度は会社で行われた不正行為を拾い上げるためのものです。
もし会社の幹部を通報窓口としてしまうと、通報対象と通報窓口が同一となってしまう可能性があり、やはり内部通報制度は機能しません。
そこで、経営幹部からも独立した通報ルートを確保し、安心して通報できる体制を整えることが必要となります。
消費者庁が公表した『公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン』は、通報窓口は可能な限り法律事務所など事業者の外部に整備することが適当であるとしています。
内部通報窓口について周知する
せっかく内部通報制度を整備しても、その活用方法が会社に浸透し、社員の信頼を得られなければ意味がありません。
通報者が内部通報制度を信頼し、安心して通報を行えるように、制度の内容について社内へ周知徹底を行う必要があります。
弊所の解決実績
Case.01パワハラ相談事例
概要
従業員の方から、勤務先で他の従業員からパワーハラスメントを受けているとの通報がありました。
対応内容
具体的に、いつ、誰から、どういったハラスメント行為を受けたのか、その回数や該当する従業員の情報等を聴取しました。
通報者からは、加害者とされる従業員へのヒアリング調査を実施することに許可を得ていたため、通報者から聴取した通報内容を、会社の通報窓口担当者に共有し、加害者とされる従業員へのヒアリング調査の実施を依頼しました。
当事者への事実調査の結果、ハラスメント行為を目撃した者や、ハラスメント行為に至った詳細な事情を知っている第三者がいることが発覚しました。
会社には、このような調査結果を踏まえ、本件の状況を客観的に判断するために、当該第三者にもヒアリング等の調査を実施するよう、助言しました。
第三者へのヒアリングの結果、通報者からの通報のとおり、ハラスメント行為があったことが発覚しました。
そのため、会社として、加害者に対しどのような措置を取るべきか、調査によって明らかとなったハラスメント行為の内容を踏まえ、助言しました。
また、通報者には、調査結果と加害者に対する措置内容を報告し、事態が収拾したため、外部通報窓口としての対応も終了としました。
弁護士の見解
内部通報に対し、そもそも調査を実施すべきか、調査を実施する場合の注意点、調査終了後にどのような措置を取るかについては、弁護士の専門的な判断を拠り所としていただくことが望ましいと考えます。
また、内部通報に対して適切に対処できなかった場合、通報者が労基署や他の弁護士に相談に駆け込むなどして、会社にとって不利益な方向に事態が進んでしまう可能性もあります。
そのため、内部通報があった場合に、迅速に弁護士に相談できる環境を整えておくことが望ましいと考えます。
Case.02業務環境の改善を求める通報
概要
通報者から、当該通報者が勤務する支店において、従業員が平等に扱われていない疑いがあるため、業務環境を改善してほしいとの通報がありました。
対応内容
当該通報者から聴取した内容を勤務先の通報窓口に共有し、当該支店において事実関係の調査を実施するように助言しました。
調査の結果、通報内容のとおり、当該支店の支店長が、従業員への処遇について差別的な取り扱いを行っていることが発覚しました。
そのため、勤務先から当該支店長に改善を求めるように指導を行うよう助言を行い、従業員の不平等な取り扱いが再発しないよう、会社において、支店の労働環境をどのように把握するかという助言を行いました。
通報者には、調査結果、今後の再発防止策を報告し、事態が収拾しました。
弁護士の見解
従業員間の不平等な取り扱いは、従業員の会社に対する信頼を損ない、退職者が頻発するなどして会社にとって貴重な労働力の喪失に繋がります。
また、本件のような通報内容は、会社内部の通報窓口に通報することが心理的に憚られることもあるため、会社の外部に通報窓口を設置し、従業員が通報しやすい環境を整えることが重要だと考えます。
最後に
コンプライアンスに対する社会の目はより厳しくなっています
2018年11月、厚生労働省は職場のパワーハラスメント(パワハラ)の防止措置を企業に義務付けるための法整備を行う方針を示しました。
法案が成立すれば、パワハラを防ぐための啓発活動や相談窓口の設置が企業に義務付けられ、これらを怠ってパワハラを放置した企業には事実の公表や罰則などの不利益が課されることになる可能性があります。
まずは弁護士にご相談ください
平成28年に消費者庁が行った『民間事業者における内部通報制度の実態調査』によると、大企業では99.2%が内部通報制度を導入している一方で、中小企業の導入率はわずか40.2%に留まっています。
その理由としてもっとも多かったのが「どのような制度なのか分からない」、二番目に多かったのが「導入の方法が分からない」というものでした。
内部通報窓口の重要性は企業規模の大小と関係ありません。
たくみ法律事務所では、企業の内部通報窓口として複数の実績を有しています。
弁護士が内部相談窓口となるだけでなく、内部窓口の整備や社内への周知についてアドバイスを差し上げることも可能です。
まずはお気軽に弁護士にご相談ください。