2018年6月29日に働き方改革推進関連法が成立し、7月6日に公布されました。
押さえておくべきポイントはいくつかありますが、今回はその中から年次有給休暇の時季指定義務についてご説明します。
改正の内容
労働基準法では、雇入れの日から起算して6か月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した従業員に、年10日以上の有給休暇が付与されることになっています。
現在、有給休暇の取得は労働者の権利として保障されているものの、使用者が従業員に有給休暇の取得を積極的に働きかける義務はありません。
しかし、来年4月1日以降は、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については使用者が時季を指定して取得させることが義務づけられました。
会社の義務
これまでは従業員の有給取得率が低かったとしても、会社としては「従業員から有給の申請がない」という弁明が可能でしたが、今回の改正により、一年間に最低5日は従業員の意見を聴取したうえで有給を取得させることが会社に義務づけられました。
もっとも、従業員の意見を尊重することは努力義務にとどまりますので、会社が忙しい時期を避けて有給取得の時季を指定することは可能です。
さらに使用者は、労働者の勤続年数、前年から繰り越された年次有給休暇の日数、新規で付与された年次有給休暇の日数等を記録した「年次有給休暇管理簿」を労働者ごとに作成し、3年間保存しなければいけないこととされました。
日本は有給取得率が低い
このようなルールが導入された背景には、日本における有給休暇取得率の低さがあります。
厚生労働省が公表した「平成 29 年就労条件総合調査の概況」によると、平成28年(または平成27会計年度)に企業が付与した年次休暇日数は労働者1人平均18.2日、そのうち労働者が取得した日数は9.0日で、取得率は49.4%に留まっています。
有給休暇の取得率は会社の規模が小さければ小さいほど低い傾向があり、1,000人以上の企業の平均は55.3%ですが、30~99人の企業では43.8%です。
日本では「休むと周りの人に迷惑がかかる」「休みづらい雰囲気がある」などといった理由で有給休暇の取得をためらう人が多く、いくら労働者に「休みを取りましょう」と働きかけても有給消化は進みづらい事情があります。
そこで、会社側に義務を課すことによって有給休暇の取得を促し、結果的に柔軟な働き方の浸透と労働生産性の向上を図ることが今回の法改正の狙いだと考えられます。
おわりに
今回の改正は会社の規模を問わず、1人でも従業員を雇っている会社であれば対象となります。
従業員の有給休暇の取得状況の把握や有給休暇の計画的付与の実施をはじめ、準備や対策を進める必要があります。