2020年4月1日に施行された改正民法では多くの変更点がありますが、今回は、契約の当事者が離れた場所にいるとき契約の成立時期について解説します。
契約は一方の当事者による申込みに対してもう一方の当事者が承諾することによって成立するのが原則です。
「対話者間」、つまり当事者が面と向かって相互に意思表示を行うときには、承諾の意思表示が相手に到達した時に契約が成立します(これを「到達主義」といいます。)
ところが、当事者が離れた場所にいる「隔地者間」で契約を締結する場合には、契約の成立時期が問題となります。
発信時?到達時?
たとえば、Xが行った契約の申込みに対してYが郵送で承諾の通知を送り、2日後にXが通知を受領したとします。
このときXY間契約はYが通知を送った時に成立するのでしょうか。
あるいはXが通知を受け取った時に成立するのでしょうか。
民法改正でどう変わった?
現行民法の規定
現行の民法では、隔地者間の契約においては例外として「発信主義」が採用され、承諾の通知を発信した時に契約が成立するとされています。
これは、隔地者間の契約において「到達主義」を採用すると承諾者が履行の準備を行うのが遅れて取引の迅速性が損なわれるためです。
隔地者間の契約でも到達主義が採用
しかし、インターネットが普及した現代では、迅速な契約の成立を望むならメールを利用すれば済む話です。
事実、すでにインターネット上の取引については電子消費者契約法で到達主義が取り入れられています。
そこで改正後の民法では、隔地者間の場合でも原則どおり到達時に契約が成立するものとされました。
契約書作成時の注意点
契約書実務においては、契約書に記載された日付が当事者間で意思表示がなされた時とされるのが一般的です。
したがって、紙の契約書を締結するときには必ず作成日を明記するようにしましょう。
なお、電子契約では当事者が同意した日時が電子データとして記録されますので、これが契約成立日となります。
問題となるのは契約書を作成する日と契約書の効力を生じさせる日をあえて別の時点とする場合です。
この場合は契約書の中に「本契約書は○年○月○日から適用される」といった条項を設けて契約書の効力が発生する日を明記すべきです。