就業規則を周知していないと懲戒処分が無効に?
会社が従業員に対して懲戒処分(訓戒、戒告、減給、解雇等)を行う場合には、
- 就業規則の存在、周知
- 懲戒解雇事由の該当性
- 懲戒解雇の相当性
が必要です。
「懲戒解雇の相当性」が問題となることが多いので見逃されがちですが、「就業規則が存在し、周知されていること」も重要です。
周知とは
ここでいう「周知」とは、労働者が就業規則を知ろうと思えばいつでも知り得る状態にしておくことをいいます。
たとえば、
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示しまたは備え付けること
- 書面を交付すること
等が一般的な方法として考えられます。
周知がなされていないとされた裁判例
就業規則を作成していたものの、従業員に対し周知をしていなかったことで、懲戒処分が無効となった裁判例があります。
「河口湖チーズケーキガーデン事件」(甲府地裁平成29年3月14日判決)では、
- 雇用契約締結の際、社長が従業員に就業規則が備え付けられている場所を伝えたとは認定できないこと
- 会社が主張する「就業規則」「河口湖チーズケーキガーデン」と記載されたシールがファイルに記載されていたことは認定できないこと
- 労働条件通知書の「具体的に適用される就業規則名」の欄が空欄になっていること
- 会社の主張する規則が、就業規則と認識していない従業員もいたこと
などから、周知がなされていたとはいえないと判断されました。
最後に
皆様の会社ではどうでしょうか?
従業員全員が常に就業規則の場所を意識している必要まではないでしょうが、探せば(誰かに聞けば)簡単に見つかる状況にはないといけないでしょう。
「社長の机の横にぶら下がっているのはわかっているが、社長の机にはなかなか近づけない」なんてことはないでしょうか。
立派な就業規則を作成しても、周知が実質的になされていなければ足元をすくわれる可能性があります。
一度、周知方法についても見直してみましょう。