妊娠中や産後の女性から労働時間について請求があったら
妊娠中及び産後1年を経過しない女性を「妊産婦」といいます。
労働基準法では、妊産婦が会社に請求したことを条件に、労働時間等についていくつかの制限が定められています。
あくまで「妊産婦の請求」があったときの会社の義務ですので、請求がない場合にまで制限されるものではありません。
制限① 変形労働時間制
労働基準法には次の4つの変形労働時間制が規定されています。
- 1箇月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制
- フレックスタイム制
変形労働時間制は、一定の条件のもとで1週間または1日の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
妊産婦については変形労働時間制を導入している場合であっても1週間又は1日の法定労働時間を超えて労働させてはならないとされています。
ただしフレックスタイム制は自分で労働時間を調整できるものなのでこの制限から外されており、「1箇月単位の変形労働時間制」「1年単位の変形労働時間制」「1週間単位の非定型的変形労働時間制」の3つが対象となります。
なお、この制限は「法定労働時間を超えてはならない」ということであって、各種変形労働時間制のもとで労働させることを禁止する趣旨ではありません。
制限② 時間外・休日労働
労働基準法では、36協定を結んだときや臨時の必要があるときに例外的に時間外・休日労働を認めています。
ところが、妊産婦が請求したときはこれをさせてはならないとされています。
制限③ 深夜労働
労働基準法では、割増賃金を支払うことなどを前提に深夜労働(原則として午後10時から午前5時まで)が認められています。
これについても、妊産婦が請求したときはさせてはならないとされています。
管理監督者に当たる場合
労働基準法には、管理監督者など一部の者に関しては労働時間・休憩・休日の規定が適用されない旨が定められています。
これを「適用除外」といいます。
では、妊産婦が管理監督者に当たるときは、これまでに説明した妊産婦の規定と適用除外の規定のどちらが優先されるのでしょうか。
この点については、管理監督者は労働時間に関する規定が適用されないため、妊産婦が請求した場合であっても変形労働時間制と時間外・休日労働を適用することはできるとされています。
他方で請求による深夜労働の禁止は適用されるため、管理監督者に当たる妊産婦が深夜労働をしない旨を請求したときは深夜労働をさせることはできません。
軽易な業務への転換
労働基準法には、妊娠中の女性から請求があったときに軽易な業務へ転換する義務も定められてます(出産後の女性は対象となりません。)
妊産婦は、この請求を上記の①~③の請求と重ねて行うことができるとされています。