運送業の労務問題
運送業では慢性的な人手不足が続いています。
2018年3月に日銀が発表した「企業短期経済観測調査(短観)」では、運輸・郵便業は宿泊・飲食サービスに次いで従業員が不足しているという状況が明らかになりました。
その背景には、Amazonなどインターネット通販の増加により需要が高まっている一方で、運送業の業務の性質上、肉体的・時間的な負担が大きく、人材が集まりづらい事情があります。
2024年には時間外労働の上限規制が適用されることでトラックドライバーの収入が減少して離職が進み、人手不足がさらに深刻化するおそれがあります。
残業代問題
運送業は、労働時間が長くなりやすいこと、労働時間の客観的な証拠が残りやすいこと、そして固定残業代制を採用している業者が多いことから、残業代に関するトラブルが発生しやすい業種です。
残業時間に関わらず一定の残業代を支払う「固定残業代制」は、場合によっては無効とされ、多額の未払い残業代の支払いを余儀なくされることがあります。
そのようなリスクを防ぐためには、雇用契約書や就業規則の規定を見直し、労働時間の管理体制の構築を進める必要があります。
実際にドライバー等から残業代を請求されたときや労働審判を申し立てられたときには、一刻も早い対応が必要です。
できるだけ早く弁護士にご相談ください。
残業代問題の解決実績
- 労働審判で未払い残業代の請求額を大幅に減額するとともに、就業規則の変更を行った事案
- 130万円以上の支払いを求めて労働審判を申し立てられたが、取り下げに成功した事案
- 高額の残業代の支払いを求められた労働審判で時間外労働の事実を争った事案
運送委託契約書をめぐる問題
トラック運送業では、取引内容を書面化せず、口約束で取引が行われる慣行があるため、このようなトラブルがよく起こります。
このようなトラブルを防ぎ、会社を守るためには、契約を書面化することが有効です。
全日本トラック協会が策定した「自主行動計画」では、「荷待ち料金や高速道路料金などのルールを明確化する」、「契約書を原則100%書面化する」といった計画が立てられています。
書面化にあたって注意しなければならないのは、「単に紙に書けばよい」というわけではなく、運賃など重要事項を漏れがないように盛り込む必要があるという点です。
雇用問題
雇用契約書は絶対に取り交わさなければいけないものではなく、使用者から雇用条件を一方的に通知する「労働条件通知書」や「雇用通知書」のみでも法的には問題はありません。
しかし、運送業においてトラック運転手を雇うとき、契約書を作らないままでいると、後々トラブルにつながる危険性があります。