ご相談企業様について
業種
サービス業
規模(従業員数)
1~10名
ご相談に至った経緯
退職した従業員から未払い残業代約300万円の支払いを求める労働審判が申し立てられ、裁判所から書類が届いたため、その対応を弁護士に依頼したいということでご来所いただきました。
これまでに、労働基準監督署を交えて支払いに関して当事者間で協議を続けられてきたようですが、従業員が弁護士を立てて労働審判を申し立ててきたため、これ以上の対応は専門家である弁護士に依頼したいとのことでした。
解決までの流れ
既に労働審判が申し立てられて第1回の期日も決まっておりましたので、第1回期日前に当方の主張を書面にまとめるために複数回の打ち合わせを行いました。
打ち合わせを踏まえ、代表者と一緒に第1回期日に出席し、当方の見解を主張しました。
審判においては、みなし残業制の有効性、労働時間管理方法、申立人(労働者)が主張する労働時間の信憑性、業務内容の確認などが行われました。
第2回期日までの間に、第1回期日を踏まえた更なる反論書面を作成し、提出いたしました。
その結果、第2回期日において、約50万円を支払うという内容の調停が成立しました。
本来の請求額は約300万円でしたので、約6分の1まで減額することができました。
弁護士からのコメント
残業代の支払いを求める労働審判において、主に固定残業制の有効性が争点となりました。
固定残業制とは、企業が毎月一定時間の残業を想定し、あらかじめ月給に残業代を固定で記載し、実際の残業時間にかかわらず固定分の残業代を支払うという制度で、一般的には「みなし残業」と言われているものです。
もっとも、この支払方法が有効であるためには、固定残業代としての支払であることが明確であること、実際に行われた残業が多く、本来の残業代が定額の残業手当を上回る場には上回った部分について別途残業代を支払うことといったような決まりがあります。
よって、みなし残業制度を採用しているといいながらも、その有効性が争われた際に無効と判断されてしまう場合も多く存在します。
今回も、就業規則にみなし残業の規定をおき、毎月一定額で残業代を支払っておりましたが、賃金台帳や給与明細等の書類上、残業代としての支払であることが明確でなかったり、上回った部分について正確な額を支払っていなかったりと、みなし残業として無効であると判断されてしまう可能性があるものでした。
労働審判ではお互い歩み寄った解決ということでその有効性について裁判所が明示的に判断を下すことはありませんでしたが、労働審判終了後ただちに、社労士の先生とも協議したうえ、就業規則の変更と残業代支払い方法の見直しを行いました。
支払額について請求額の約6分の1に減額できたことはもちろんですが、労働審判を申し立てられたことをきっかけに就業規則を適切な内容に見直すことができ、企業にとっても長い目でみるととても良い契機になったのではないかと思います。